先週、脳外科医の福島先生が亡くなりました。福島先生は脳外科医の世界的権威で、手術の腕を習おうと多くのお弟子さんがいつもついて回っていました。陽気な人柄で、でも真剣な目つきで、クレイジーなドラマーで、そして何よりニューオリンズジャズが大好き。福島先生と一番最初にお会いしたのは、まだ90年代で、私は学生でした。渋谷のジャズ店「ティファニー」で90 West Jazz Bandと演奏していると、ふらっと福島先生が表れて、満面の笑顔でドラムをたたいて演奏してから、渋谷駅まで一緒に帰りました。福島先生は当時、東大から米国に行ってまだちょっとの時期で、海外でチャレンジしている最中といっていました。私は当時、司法試験の勉強をしていたのですが、思い切り勉強しなさい、人生にそういう時間は必要だから、と言ってくれたのをよく覚えています。ジャズ関係の人からそういうことを言われたことがなかったので、なんだかとても嬉しく思ったのを覚えています。
その後も何度か演奏に誘っていただき、あるときはサンディエゴ経由でノースカロライナに演奏遠征し、あるときはニューオリンズに演奏遠征し、あるときは銀座に遠征させてもらいました。ピアノの大野もたくさん一緒に演奏していましたね。脳外科医の学会をやるときに呼んでいただき演奏をすると、大勢のお弟子さんがわらわらと集まってきて、お前は誰だという顔をされるので、私はそのときはじめて、あぁこのひとはこういう人だったのか、とわかったのでした(笑)。後に実家が明治神宮でお父さんが宮司と知りまた、驚きましたが…。でも、当の福島先生はそんなことは何にも関係なしに、陽気なドラムをたたき、手術中も音楽きいたりしてね、そうすると調子があがるんです、などと言っていました。忙しい手術スケジュールの合間にドラムをたたきにくる姿は、ジャズへの情熱以外のなにものでもなかったと思います。
福島先生はその後、すっかり有名人になり、ゴッドハンドの天才脳外科医として、本が出たり漫画が出たりドキュメンタリーになったりと、大活躍されていましたが、私の胸にいつも残っているのは、一番最初にあったときにくれた、思いきり勉強しなさい、人生にそういう時間は必要、という言葉でした。それで、仕事と音楽を両方たのしむ。福島先生から頂いたものや学んだことは沢山ありますが、きっと多くの人に同じように多くを与えてきた人だと思います。福島先生、天国でもどうぞ満面の笑顔で演奏しながら、多くの人に囲まれてください!
ss. Kitanaka, pf. Ono, bj. Terajima, bass Yano, dms. Fukushima
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