blues in thirds

この記事は約2分で読めます。
大昔に書いたコラムから。なるほど、いろいろと言っているようですが、先週この曲を久しぶりに演奏してみて思ったことは、あ、これって、夜遅くに静かに焚火がくすぶる音・・・でした。笑
——————————————————-
2008年1月14日月曜日
Blues in Thirds

ピアノの名手アール・ハインズが1928年に作曲しソロピアノで録音した曲。何となく東洋的で静かな和音が耳に心地よい、まるで子守唄を聴くような優しいブルースだ。べシェは1940年の秋に、ハインズのピアノとベイビー・ドッズのドラムをバックに録音しているが、べシェの演奏もハインズのピアノに劣らないほど素晴らしく深い温かみがある。

心の中が落ち着く音がある。冬のからっと晴れて風の凪いだ海辺で、松林の上から聞こえてくるトンビの威勢良いのんびり声。誰もいない夕方の砂浜に夕陽に照らされながら滑らかに打ち寄せる湖の遠慮がちな波の音。寒さがしみる秋の夜の湿った闇の中で燃え尽きそうな赤い焚き火がくすぶる音。薄く霧の這う早朝の眠たげな湿原の静寂に遠くこだます白鳥のミュート・トランペットのような鳴き声。どれを聴いたときも強烈に、ああ、いい音だな、と思った。そしてこの曲を初めて聴いたときも、いい音だな、と思った。

何かの拍子に似たような香りを鼻にし、昔の記憶が突如思い出される、ということはたまにあるが、今まで音については不思議とあまりそういう覚えがない。でも、もしかしたらそれはそれで良いことなのかもしれない。世の中には、毎日出会えないような音が沢山溢れている方がいいだろうから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました